シャウトをアートに込めて 藤井晋也

シャウトアートに込めて

 
「無題」藤井晋也 2011年 720mm×510mm クラフト紙 ペン

 滝川市在住の藤井晋也さん(42)から「新作が出来ている」と電話があったので、久しぶりに訪ねてみた。

 藤井さんは、私が代表を務めているNPOラポラポラが道立旭川美術館で企画主催した「北海道のアウトサイダー・アート」(09年)にご出展頂いた作家で、緻密な画風に注目が集まった。その後も札幌の若手アーティストたちのグループ展に招待されるなど活躍している。

 藤井さんの画風は緻密ゆえに制作に時間がかかり、1枚を完成させるのに約三カ月を要する。作品が溜まったらぜひ個展をしてみたいと、私は切望していた。
 私と藤井さんは年齢が近く、同じ時代を過ごして来ただけに、彼との話は大変興味深い。今回の訪問では時間をかけてじっくり彼と話した。

 藤井さんは小学校、中学校、高校で、イジメにあい、心の中にどうしようもない怒りが渦巻いていた少年時代を過ごした。

 相手の事を理解せず、言葉や行動で精神を傷つけて反応を楽しむような卑劣な行為が今も昔も学校や社会にある事はまったく残念だ。
 自分と違っている考えや感性、行動を奇異と捉えず、相手の内面をじっくり見ることが出来れば、自分の価値観に無いそれらの行為を理解し、新しい発想や世界観を得られるのに、まったくイジメとは、もったいない関係性だ。
 多様な価値観を認め合い、発展させてこそ人間社会は豊かになると私は思っている。

 藤井さんがアートに心を寄せたのは、行き場の無い自分の想いを吐き出したかったからだ。  
 高校時代にマンガ雑誌の公募にシンボルマークのデザインがあり、応募したところ紙面に掲載。それがきっかけとなってデザインに興味を持ち、高校卒業後は北海道造形デザイン専門学校に進学し、商業デザインを学ぶ。
 卒業後は海外での創作活動を夢見た。資金調達のために愛知県の自動車組立工場をはじめ札幌や東京でガードマンをしたが、不規則な生活と創作活動で体調を悪くし、ついには精神が不安定となり統合失調症となった。自宅での療養を経て、ようやく07年から少しずつ絵を描けるようになったという。

 藤井さんはCDやラジオから流れる楽曲を聴きながら制作する。「音の波動から生まれてくる線」で構成した文様は、バリのイメージ、ロボット、昆虫、植物、貝殻など様々なものと組み合わされている。

 以前に拝見したものと比べると、さらに表現が固まって、独自の世界がよりリアルになっている。「どんどん聴覚が研ぎ澄まされるのです」と彼は言う。

 芸術によって精神世界で真の自由を獲得しようとする藤井さんの姿勢を私は尊敬している。

 海外での個展という彼の夢を実現させたいと、私も密かに強く思っている。

(あさひかわ新聞 2012年8月14日号 工藤和彦「アール・ブリュットな日々」より) 
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